山形国際ドキュメンタリー映画祭
2019.11.25
総合政策学部准教授 馬内里美
総合政策学部准教授 馬内里美
趣味の一つは映画観賞である。ドキュメンタリー映画も見る。それなのに山形国際ドキュメンタリー映画祭は、改めて考えると不思議なのだが、縁のないものと思っていた。山形には数年間、ある市民勉強会に不定期に参加して、心理的な距離感も今ではない。
この夏、同僚が映画祭上映作品を紹介してくれた。驚いた。ちょうど観てみたいと思っていた映画『理性』だ。監督も来る。これは観に行かなければいけない。私が関心を持って いるインドのヒンドゥーナショナリズムの話題を扱っている。ここ数年研究ノートも書いた話題である。
山形国際ドキュメンタリー映画祭は、山形市制施行百周年記念事業として始められ、二年に一度十月に開催されている。今年はちょうど三十周年。
鑑賞準備として行きの電車で自分の研究ノートも読み直した。四時間近くの映画で情報は盛りだくさん。文章で読んだ事件や人物、さらに読むだけではわからないことを映像で観るのは、強烈であった。
当初の予定では『理性』のみを観て帰るはずだった。だが台風の接近で電車が運休になるので山形に宿泊、翌日の夕方にも上映されるので、もう一度観た。二回目に観ると、関心の対象が変わり、見方も変わる。初回は憤りが強かったが、再度見ると、勇気とは何かを考えさせられた。上映後の質疑応答も十分に時間があり、私もコメントした。またあるドキュメンタリー作家と再会し、この映画について話すこともできた。
驚いたのは、高校生が質問していたこと。東京オフィスのボランティアのようである。山形を中心に全国からボランティアが三百人以上集まっているそうだ。山形、仙台、東京で説明会開催とのこと。
夜には、交流会もある。二晩目も宿泊することになり、交流会に足を延ばしてみたが、盛況だった。歩道に溢れるほど熱気のある雰囲気に気後れしてしまったが、台湾から二回目の参加だという若い女性たちや、地元の映画祭の理事の方と話した。隔年とはいえ、三十年も続け、映画祭の文化的な蓄積の重みを感じた。映画祭自体の面白さと同時に、新たな山形の魅力を発見した。次回は二年後、今から楽しみである。
宮城県内でも猛威を振るった台風19号の時期だったが、山形では雨もそれほどひどくなかった。二日目は天気も良く、のんきに映画祭を楽しんでいたが、後日、各地の惨状をテレビで見て、映像の力と気候変動の恐ろしさを改めて感じた。