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大学概要
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2023年度東北文化学園大学 学位記授与式

学長式辞

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 本日、晴れて卒業と修了の日を迎えられた皆さん、誠におめでとうございます。今日まで長い学生生活を支え続けて下さったご家族や関係者の皆様にも、心からお祝いを申し上げます。また、お忙しい中ご臨席いただきました来賓の皆様には、深く感謝申し上げます。コロナ禍のため、ご家族や関係者の皆様を迎えての学位記授与式は、私が2021年4月に本学学長に就任してからは、初めてであり、とても嬉しく思っております。
 かつて多くの教職員と先輩の学生に迎えられ、皆さんの大学生活がこの国見の丘のキャンパスで始まりました。当初は、老虎机游戏感染症の拡大のため、入学前に皆さんが思い描いていた学生生活とは大きく違ったと思います。慣れないオンライン授業が続き、課外活動が大幅に制限され、同期や先輩との繋がりもままならない大学生活のスタートだったのではないでしょうか。

 その後、対面授業が徐々に増え、課外活動の制限も少しずつ緩和されました。昨年の5月には、この感染症の法律上の位置付けが変わり、秋には4年ぶりとなる本格的な学園祭が、2日間にわたって開催されました。学園祭のポスターに大きく書かれた「革新 青春をとりもどせ」というテーマをみて、皆さんは本当に色々なことを我慢していた、あるいは我慢させられていたのだと感じました。皆さんは、感染症だけではなく様々な困難を乗り越えて、今日、学位記を手にします。どうぞ自分自身を褒めてあげてください。私も皆さんをとても誇りに思います。

 皆さんの大学生活最後の一年となった2023年度には、多くの忘れられない出来事がありました。日本の統計史上、最も暑かった夏を私たちは経験しました。また、ロシアによるウクライナ侵攻が続く最中、パレスチナのガザ地区で激しい戦闘が始まり、多くの市民が犠牲になりました。今もたくさんの市民が攻撃の恐怖と飢餓に苦しんでいます。さらに、年明け直後の能登半島地震では多くの方が亡くなり、避難生活を余儀なくされている方が、たくさんいらっしゃいます。気候変動、世界情勢、そして自然災害、そのどれをとっても歴史に残る大きな出来事があった一年でした。

 さて皆さんは、大学生活の後半で人工知能AIの急激な進歩を実感したのではないでしょうか。特にチャットGPTなどの生成AIの利用の拡大には、目を見張るものがあります。一方、昨年、センター?オブAIセーフティという米国のNPOが、次のような声明を出しました。「パンデミックや核戦争といった社会規模のリスクと同様に、AIによる人類絶滅のリスクを減らすことを世界的な優先事項とするべきだ。」というもので、多くのAIの専門家やテック企業のトップが賛同し、署名しました。

 署名した人の中には、チャットGPTを開発したオープンAIのサム?アルトマンCEO、グーグル?ディープマインドのデミス?ハッサビスCEO、さらにはマイクロソフト社の創業者のひとりであるビル?ゲイツ氏も含まれます。一方で、こうした懸念は大げさだとする専門家もいるようです。

 センター?オブAIセーフティは、AIによる人類絶滅のシナリオを具体的に示しています。イギリスのBBCニュースがわかりやすく要点を紹介しているので引用すると、AIが兵器となり新しい薬の開発ツールを化学兵器の製造に使う可能性、AIで生成された偽情報が社会を不安定化させ、集団での意思決定に悪い影響を及ぼす可能性、AIの力が少数の人に集中し、国家が監視と抑圧的な検閲を通じて、狭い価値観を強制する可能性、映画「ウォーリー」で描かれたシナリオのように、人類がAIに頼りすぎて衰退する可能性などです。

 皆さんが旅立っていくこれからの社会では、AIのさらなる進歩と活用の拡がりにより、様々な分野でその重要性が急速に高まっていくことが確実です。製造業、商社、金融業、医療と福祉を含むサービス業、行政、農林水産業など例外はないと言ってよいと思います。AIの開発にあまり規制をかけるべきではない、という意見も聴かれます。しかし、例えば我々が原子力発電所の事故を十分に予見し、防ぐことができなかったように、取り返しのつかないことが起こった後で、後悔することがあってはならないと考えます。

 日本政府も最近、AI事業者向けのガイドライン案を公表しました。この中で人間中心が強調されているのは、そうでない社会をAIがもたらす可能性を示していると言えます。世界が抱える数々の深刻な問題の解決に、AIの力は欠かせません。私達はそれぞれの立場で、誤った方向でAIが活用されないよう注意を払っていく必要があると思います。

 結びに本学の建学の精神は、「老虎机游戏」です。「輝ける者」とは、自立した力を持ち、他者とかかわり合いながら未経験の問題に応える人です。これからも皆さんが日本と世界の情勢と課題に常に関心を持ち続け、自分がそれらとどう向き合っていくかをしっかり考えながら、自らの輝きを増し、真の「輝ける者」に成長することを願い、私の式辞といたします。本日は、誠におめでとうございます。

2024年3月15日
東北文化学園大学
学長 加賀谷 豊