小論文コンクール
総合政策学部教授 小出 実
東北文化学園大学に4月に着任してもう4ヶ月が過ぎようとしている。少し前まで同じ建屋の中で、私の研究室から目的地まで行くのに迷っていたのが昔の事のようだ。
この大学では高校の担任のような小人数の学生指導をするためのSA制度を採用している。私が担当する学生は1年生と2年生を合わせると十一名となる。それは、専門基礎科目として学生生活に必要なアカデミックスキル等を習得する為の基礎ゼミの授業として実践されている。大学生と教員との距離を埋める画期的なもので、私か気に入っている制度の一つである。
私が所属している学会の監事である先生から小論文コンクールの募集要項のポスターを頂いた。それは「科学的管理法の父」として著名なF?W?テイラーの「テイラー協会」を源流とする歴史のある世界的なマネジメント研究団体「SAM日本チャプター」創立90周年記念の懸賞小論文コンクールへの募集である。応募要領には「パソコンで打ったもの」2頁以内、賞および賞金に優秀学生賞5万円で3席となっている。最優秀賞は30万円で1席等があり、少子高齢化等に直面している日本企業の在り方について「私が経営者だったら、こんな企業や組織をつくる」というテーマの提案である。
これは、大学生のアカデミックスキルの材料に適していると思い、掲示板にもポスターを貼ってもらった。賞金が功を奏したためか、特に異議はなく私が担当するゼミ学生全員の十一名が取り組むことに決まった。小論文が初めての学生が多く書き方の図書を借りて小論文の基本構造を説明し、引用の仕方等を説明したりした。全員が真剣に取り組んでくれた。6月30日の消印有効の締切日はあいにく小雨の天候の中、学生の一人が大学の近くの郵便局までバイクで出しに行ってくれた。残念ながらこの最終便に間に合わなかった学生もいた。結局、十一名のうち六名の小論文を投稿することができた。
私が学生時代には感想文を書いたぐらいである。ましてや自分の主張を文章で発表したり、投稿したりした経験はほとんど無い。この小論文がゼミ学生の良い経験になってくれることを願っている。私の現在までの知識の収支を考えてみると大学卒業までは専ら知識のインカムという収入の一方で、アウトカムの貢献は、ほとんど無かったように思う。就職して実務者になって初めて発明や社内論文発表で知識の創造に少しずつ取り組んできた。最近ようやく遅まきながら研究者になれたように感じている。
これからは教員として知識のプロバイダーとしての自覚と責任をもって、学生と一緒になってやっていきたい。密かに一人でも入賞してくれることを祈っている。