看護学?リハビリテーション学研究

看護学?リハビリテーション学研究からのアプローチ

日常生活における足関節の随意運動制御の役割 ~リズム運動機構に着目して~

沼田 純希  助教
医療福祉学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻
沼田 純希 助教

研究開始時の研究の概要

日常の歩行においては,混雑する歩道や点滅する信号など,状況に応じて歩行リズムを随意的に調整する能力が必要とされる.しかし,パーキンソン病といった中枢神経疾患では,タイミングなど時間情報の処理能力が低下していることが知られ,歩行時にも適切なリズム調節が困難となると考えられる.

現在の歩行リハビリを目的とした研究では,脳幹や脊髄の神経系による自動的なリズム調節機構が重視されており,随意的なリズム調節に関する研究は少ない.本研究は,両側下肢の随意的なリズム運動の特徴を,運動学的?神経生理学的手法により明らかにし,神経疾患患者の社会的自立を目指す歩行リハビリの発展に資することを目的とする.

研究実績の概要

円滑に随意運動を行うには,脳内の適切な時間情報処理が不可欠である.近年,時間認知における小脳や大脳基底核,前頭葉の重要性が示され,小脳疾患やパーキンソン病患者の時間処理能力の低下が報告され,これに依る,随意運動の遂行能力の低下が疑われている.本研究は,上肢で行われたこれらの研究を基に,歩行に重要な下肢のリズミカルな運動について着目し,その制御パターンの特徴と制御に関わる脳領域を明らかにすることで,歩行障害に対するリハビリテーション技術の発展を目指すものである.

2019年度に行った実験から,下肢の運動では上肢に比べて比較的長い時間間隔でも安定して運動できること,さらに下肢の逆位相性の交互運動では感覚フィードバックの条件(同期する音の有無,タップによる触覚刺激の有無)を問わず安定したリズム形成?保持が可能であることが明らかとなった.

2年目となる2020年度は,リズム形成?保持に関わると推察される運動関連脳領域の検討を近赤外分光法(NIRS)および経頭蓋磁気刺激法(TMS法)により着手した.現在は,TMS法の刺激部位,刺激強度,刺激呈示のタイミング等を確認しており,これを基に今後実験協力者で検査を実施する予定としている.