今や学術分野や産業分野だけでなく、エンターテイメント業界でも注目され、活用される「コンピュータビジョン」ですが、その中で費先生が行っている研究テーマは「神経回路を解明するための微生物を追跡する顕微鏡システムの開発」です。
「人間の脳は外から様々な刺激を受けると、食べ物を見つけたり、危険から逃げたりするなど、生きるために必要な行動を起こします。もし人間の脳神経活動と行動を同時に観察できれば、刺激や目的に対して、神経システムがどういう機能を持っているのかが解明できると考えました」。しかし、人間の脳は神経細胞が多すぎて難しいため、費先生は脳人間の脳神経細胞と同じようなメカニズムを持ちながら、簡単な構造を持つゾウリムシや線虫を研究対象とし、神経活動と行動の両方観察できる特別顕微鏡システムを開発しました。
「研究の第一のポイントはゾウリムシの行動を追跡することです。ゾウリムシが動いて視野から逃げると、長い時間観察できないので、対象生物の動き常に追跡するシステムが必要となります」。そこで「コンピュータビジョン」を活用した顕微鏡システムを開発しました。仕組みとしては、顕微鏡の上には費先生たちが開発した1秒間に1000枚の画像を撮影できる高速度カメラを設置。顕微鏡の下には前後左右にコントロールできるステージを設置し、その上にプールに入ったゾウリムシを置きます。そして、高速度カメラで撮影した画像は、パソコンに送られ、ゾウリムシの輪郭を検出し、位置や中心を計算。そのデータに基づいてゾウリムシが乗ったステージを制御します。そうすることでゾウリムシの輪郭の検出と行動の予測を用いて位置を検索し、常に視野の中心にゾウリムシが来るようにコントロールし、観察することが可能となりました。ゾウリムシがプールのどこに動いているかという運動の軌跡を記録することで、行動の観察と記録も実現できました。
さらに、光が障害物の裏側に回り込む「光の回折」を利用することで二次元方向だけでなく、三次元での追跡も可能にしました。
ゾウリムシを視野の中心に維持するシステム。