工学研究

工学研究からのアプローチ

人工心肺使用中の溶血防止に資するローラポンプ適正圧閉度の解明と調整システムの開発

深谷 碧  助教
老虎机游戏 臨床工学科
深谷 碧 助教

研究開始時の研究の概要

人工心肺装置で用いられるローラポンプはチューブの圧閉度と溶血が関係し、過度圧閉や不完全圧閉はともに溶血を引き起こす。圧閉度調整方法は日本工業規格に制定されているが、科学的根拠が明らかになっておらず、不適切圧閉による溶血起因の急性腎障害や圧閉度調整に時間を要することが課題となっている。そこで本研究では、圧閉されたチューブの断面積を計測することで機械的ストレスを算出し、実験動物を用いた溶血試験によって総合的に圧閉度を検証する。得られた研究結果をもとに、ローラポンプの適正な圧閉度の解明と圧閉度自動調整システムの開発を目的とする。

研究実績の概要

心臓手術に用いられる人工心肺装置のローラポンプは圧閉度と溶血が関係し、過度圧閉や不完全圧閉はともに溶血を引き起こす。しかし、ローラポンプの圧閉度調整方法に国際的な基準はなく、血液にどの程度の機械的ストレスが加わっているかは不明のままである。よって、ローラポンプを用いた体外循環における溶血を防ぐためには、近年の血液適合性に基づいた医工学的定量評価が求められている。そこで、ローラポンプの適正な圧閉度の解明と圧閉度自動調整システムの開発を目的として研究を行っている。

ローラポンプによる血液への機械的ストレスには、せん断速度やせん断応力、せん断応力の暴露時間が関係しており、これらの算出には圧閉されたチューブ内部の流路形状と流体速度の計測が必要である。そのため、圧閉部からの逆流量と圧閉されたチューブ内流路形状を可視化する圧閉度定量評価システムを構築する。次に、ローラポンプと小型循環試験回路を用いた加速循環試験条件における溶血量を評価し、圧閉度定量評価システムから得られた結果と溶血との関連性を検討する。さらに、リアルタイムで圧閉度を自動調整できるシステムを開発する。現在、圧閉部からの逆流量評価と圧閉されたチューブ内部の3次元流路形状構築に成功し、解析した。また、ヤギ血を使用してin vitro溶血試験を実施し、圧閉度を変化させたときの溶血への影響を検証している。残りの期間で、ローラに押圧されたチューブの画像より、リアルタイムで圧閉度を自動調整できるシステムの開発を進める予定である。